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Key-Eyeとは?
これからの九州の情報化推進に向け、ひとつの「鍵(Key)」となる、あるいは新たな「視点(Eye)」となる話題を提供していこうとする思いを込め、「Key-Eye」というネーミングにさせていただきました。
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【2022年度執筆者】 国立大学法人 信州大学理事(情報・DX担当)、副学長 不破 泰 氏 2022年度「Key-Eyeあるメッセージ」は不破様よりいただくこととなりました。DXを推進していくポイントに関し、信州大学情報・DX推進機構での取り組み等を通じ、全4回のコラムにて寄稿いただきます。 [記事全文はこちらから] |
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株式会社NTTアグリテクノロジー 取締役 前原 慎吾 氏 「農業×ICT」を通じた地域経済活性化や街作りに取り組んでおられるNTTアグリテクノロジー様の取り組みについてご紹介いただきました。 [記事全文はこちらから] |
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「石田 智行 氏」 福岡工業大学 情報工学部 情報通信工学科 教授 VR/MR/AR等の情報通信技術を活用し、伝統工芸産業の更なる発展に向けた研究開発を進めておられる石田様より寄稿いただきました。 [記事全文はこちらから] |
「田尻 浩章 氏」 (株)熊本放送 経営推進本部 DX推進局長 デジタル社会浸透に伴うオンラインとリアル双方の情報認識の重要性に関し、田尻様より寄稿いただきました。 [記事全文はこちらから] |
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「長崎県」 県内自治体が一体となったデータ連携基盤推進事業を進めておられる長崎県における取組について寄稿いただきました。 [記事全文はこちらから] |
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「九州ICTセミナー」他3件 [詳細はこちらから] |
既にご存じの方もおられるでしょうけれど、昨年、国際度量衡局(BIPM)において、2035年まで「うるう秒」の利用停止が決定されました。我々が現在、日々認識している時刻は、原子時計にもとづく標準時によるもので、日本標準時は、情報通信研究機構(NICT)にてもたらされています。ちなみに世界標準時(協定世界時:UTC)は、世界各国にある数百台の原子時計からのデータをもとに前述したBIPMにて策定されています。さて、このような機械的時刻が刻まれている一方、我々が生活するこの地球自体は、24時間ピッタリの周期で自転している訳ではありません。この誤差を解消するために1972年(以前は地球の自転速度を基準に標準時を策定)から制定された仕組みがうるう秒となります。「うるう」というネーミングですが、うるう年のように4年に1度、という定期的なものではなく、UTCと地球の自転に基づく時刻の差が0.09秒を超えそうになったとき、UTCを1秒分調整する、つまり、59秒のカウントの次が00でなく、60を差し込むということとなります。この差し込みがこれまでの間、27回ほどあったようです。このような不定期な時刻補正は、現在のデジタル社会の現状を考えると結構面倒なことになりそうなことはある程度容易に想像がつくところでして、実際に世界各国で様々なシステム不具合をもたらしてきているようです。実は、昨今、このうるう秒にはさらに厄介な問題も生じてきているようです。それは、近年の地球の自転速度の上昇、という現象です。これにより、従来うるう秒とは、標準時に1秒を足すという処理がその仕組みだったのですが、逆に1秒を差し引かねばならない、つまり「負のうるう秒」という新たな事態が生じることとなったのです。これに関しては、従来のうるう秒の比ではない、かなり深刻な影響をシステムに及ぼすことになる、とデジタル業界から強い意見が相次いで表明され、この辺の意見が大きなトリガーとなり、うるう秒の利用停止(2035年までに別の解決策を編み出す)へと至ったようです。まぁ、ひとまず自転速度上昇の件は別とし、これまでの事例から、うるう秒対応をしなかった際の単純な予測を行うとすれば、ざっくりと約50年で27秒の誤差ですので、約1000年(2972年)後で9分、つまり1972年から約8万年後には昼と夜の時刻が逆転する、ということとなります。これをどう考えるか、という点に関しては色々と意見も分かれてくるのかもしれません。
さて、我々は、いつからこんなに時刻というものに過敏になってきたのでしょう。日本人に関していえば、皆様ご承知の通り、江戸時代の頃、庶民の大半は、日の出と日没を基準に昼夜をそれぞれ6等分(おやつとは昼のやつ(八)の区分)した時刻に基づきお寺が鳴らす鐘の音に従い、時刻を認識していました。今から考えると、ある意味ゆったりとした時間の流れの中で暮らしていたような気がします。当時の外国人からは、日本人は待ち合わせ時間に来ない時間にルーズな国民、という不満も出されていたようで、現在の日本人とはかなりかけ離れたイメージには何となく親しみ(笑)がわいたりもします。人はそれぞれ固有の時間軸(固有といえど、年齢、状況、対象等によりかなり可変的であると思いますが)を持っていると個人的には思っています。江戸時代の時間制度とは、こういう個人固有の時間軸とうまくバランスをとるのに都合が良いものだったのかもしれません。ただ、今や我々は、正確な原子時計に基づく共通の時間軸上に自身の時間軸をあわせていかねばなりません。特にビジネスにおいては、これはある意味必然のことであり、現在のデジタル技術もそれに関して大きく寄与しているものと思われます。ビジネス上において、両時間軸の整合を必然たるものとしている究極的な要因とは、コスト意識(効率性)であろうと考えます。そうすると我々は、一般的なビジネスシーンにおいて、効率性というプラットフォーム上に配置される正確無比な時間軸(仮にビジネスタイムラインと称します)に対し、個々の時間軸をあわせていく、というプロセスを日々求められている、といえるのかもしれません。この際、個人特有の時間軸(スキル不足等で仕事の処理が遅いという類の特有時間は論外です(笑))とは全く無用なものなのでしょうか。考え方の変化に対する固有時差、ものごとに対する感じ方そのものの固有時差等といった個人特有の時間軸とビジネスタイムラインとの誤差を許容していくことで、単なる効率性の追求だけからは生じない、より高い価値の創出も可能になってくるのかもしれません。社会全体として多様性をより享受していこうとする時代へと変化している中、ビジネス上においても、昨今、様々な「レス」に関する見解を良く耳にします。そういった議論の中に、この個人特有の時間軸の差、という概念がもっと盛り込まれてきても良いのでは、とも思うところです。そして、「うるう秒」ではないですが、ビジネスとしての時間軸と個人としての時間軸の誤差がうまく整合可能なデジタル技術の進歩にも今後期待したいところです。DXの進展には、こういうところにもひとつの鍵が潜んでいるのかもしれませんね。
Key-Eyeは本号で発行10年となりました。発行当初は10年後の想像もつかなかったところですが、おかげさまで、ひとつの節目を迎えることができました。Key-Eyeがやがて独自の時間軸(笑)をご提供できるような、そんな媒体になれることを目指し、今後とも取り組んでいきたいと思っております。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。