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九州テレコム振興センター(KIAI)は内閣府認可の非営利型一般社団法人です

TEL. 096-322-0120

〒860-0805 熊本県熊本市中央区桜町4番20号

会員向けWebマガジンKey-Eye

Key-Eyeとは?
これからの九州の情報化推進に向け、ひとつの
「鍵(Key)」となる、あるいは新たな「視点(Eye)」
となる話題を提供していこうとする思いを込め、
「Key-Eye」というネーミングにさせていただきました。

◆Key-Eyeあるメッセージ
(ICT分野有識者による
全4回のコラムを掲載)

   

【2025年度執筆者】
北陸先端科学技術大学院大学 副学長・教授
丹 康雄 氏


2025年度「Key-Eyeあるメッセージ」は丹様よりいただくこととなりました。ご自身のこれまでの活動等を振り返り、ICTのこれまでの変遷とその将来に関するコラムを年間を通じていただきます。第三回は「ユビキタスからWeb2.0へ」をテーマとして寄稿いただきました

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*Key-Eyeあるメッセージの
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◆Key-Eyeあるトピックス
(全国各地の様々なICT分野の
トピックスを掲載)

   

株式会社Space Compass 宇宙DC事業部
事業開発部長 古川 操 氏

(株) Space Compass社による宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想の取組みの現状と今後の展望等に関する寄稿をいただきました。

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*Key-Eyeあるトピックスの
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◆Key-Eyeある人
(ICT分野で活躍されている産学官
関係者の熱い思いを掲載)

「嶋本 寛 氏」
宮崎大学 工学教育研究部 准教授

「ビッグデータ」を活用した交通行動解析等に取り組んでこられた嶋本氏より、最近の研究テーマのひとつであるEVと電力供給力に関する数理モデルの研究に関する寄稿をいただきました。

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「宮脇 恵理 氏」
アイ.ジー.シー株式会社 代表取締役

人と人、個人と地域、リアルとオンラインを人の関係性のあたたかさでつないでいく新たなコミュニティシステム「SUITS」を展開されている宮脇氏より開発経緯等に関する寄稿をいただきました。

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*Key-Eyeある人の
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◆Key-Eyeあるまちづくり
(九州でのICTを活用した様々な
地域づくりをご紹介)

「ながさきDX推進プロジェクト事務局」
(公財)ながさき地域政策研究所 事業推進部長 兼 事務局長
濵崎 竜之介 氏


中長期的に更なる多様化が進む中小企業の課題解決に向け、様々な機関とも連携し、継続的なDX支援を図っている「ながさきDX推進プロジェクト」の取り組みに関して寄稿いただきました。

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*Key-Eyeあるまちづくりの
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【主要活動報告】
(令和7年8月~令和7年10月)

「第五回九州デジタル推進ワーキンググループ」


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【ICT関連データ】


各種統計データ


【編集後記】

「人新世(Anthropocene)」という言葉を耳にされたことはあるでしょうか。この言葉を説明するには、地質年代ということを述べる必要があるのですが、この地質年代とは地球誕生以降の年代を地層、岩石、化石等の形成状況に応じて区分化したもので、例えば「ジュラ紀」「白亜紀」といったような名前は、恐竜生息の地質年代を表すものとしてお聞きになったことがあるのでは、と思われます。現在は、ジュラ紀、白亜紀と同レベルで表すと、「第四紀」というものになるようです。ちなみに地質年代の表現は、大きく5つの層に分かれているようで、この「紀」は、上から3層目の分類表現で、「紀」の下はさらに2階層に分かれ、紀のすぐ下の層は「世」というもので、このレベルまで表現すると、現在は、「第四期・完新世」となり、これは氷河期終了後から今日まで、という位置づけのようです。さて、そういった中、数年前よりこの「世」の階層レベルに関する地質年代において、新たに「人新世」というものを設定すべきではないか、という議論が生じてきていました。人の社会経済活動拡充に伴い、化石燃料の燃焼由来物質、残留性有機化合物、さらには核実験由来の放射性同位体等といったこれまでの地質時代には顕著でなかった人由来の様々な物質の堆積が進展しており、このことは世界規模的な環境破壊、気候変動等を迎えている現在の特徴を表すことでもある、という見解に基づくもので、オゾンホール研究でノーベル賞を受賞した大気化学者パウル・クルッツェン博士が2000年に提唱したものです。なお2024年に、国際地質科学連合(IUGS)において、地質学的に「人新世」を明確に位置付けるには時期尚早という結論が出たのですが、ただこれは「人新世」の見解を真っ向から否定している、というより、あくまでも地質学的に新たな人由来の独立の年代を設定するには、まだ色々と必要な分析項目がある、といったことが主な要因のようです。今後とも、人がもたらした地球規模の変化に関する地質学的アプローチは更なる研究が進展していくことと思われます。
さて、この「人新世」というキーワードを知った際、個人的に少し違う次元からの関心が沸きました。人新世とは、地質学、つまり地中に堆積している様々な物質等を分析していくことから生じてくるひとつの仮説ですが、例えば分析対象を「地中の堆積物」から「情報化社会の堆積物」に置き換えたらどうなるだろうか、と。情報化社会における堆積物とは、つまりは「データ」にほかならないと考えます。つまり、私たちが生きる情報化社会にも、データが蓄積していく地層のようなものが存在しているのではないでしょうか。そのデータの量と質を分析していくことで、地質年代と同様の区分化が可能になるのかもしれません。この場で詳細なアプローチはとても無理ですが(笑)、例えば、(商用インターネット普及後の)ここ30年ほどに関して簡単に考えてみると、大きく3つの「世」に整理できるのでは、と思われます。
まずは1990年代~2000年代初頭、通信技術がダイヤルアップからブロードバンドへと移行し始め、データ量もギガ(109)バイトからテラ(1012)バイトクラスへとなり、IT革命というキーワードが良く使われていた『アナログからデジタルへの変換に伴うデジタルデータ自体の蓄積拡充が主であった「世」』、次に2000年代~2010年代、3G~4Gといったモバイル通信技術が向上するとともに、SNSというツールが爆発的に進展、それらに伴いデータ量も一気にペタ(1015)~エクサ(1018)クラスとなり、いわゆるビッグデータ、クラウドというキーワードが出現した『デジタルデータを産み、それを流通展開させていくことが主であった「世」』、そして最後に2020年代からの現在、IoTの拡充、そしてビッグデータを対象とした(第3次)AIの進展が、データ量をゼタ(1021)バイトにまで押し上げ、DXというキーワードが世界中を席巻した『デジタルデータを価値創出の源とし、データによる新たな社会変革を図っていこうとする「世」』、といったようなものに大きく区切られるのではないでしょうか。仮に「人新世」的な言葉に倣えば、1990年代~2000年代初頭を「情報旧世」、2000年代~2010年代を「情報中世」、現在を「情報新世」と呼べるのかもしれません。こうして見ると、情報化社会の「世」の変遷が、まるで地質年代のように見えてくる気もします(笑)。
地質学において「時代を定義する」目的は、過去を区切ることではなく、その時代の本質を探求し、次の課題を見出すことにあります。同じように、前述した「情報新世」の本質を考えるとするならば、それは何でしょうか。私は、それは、データと価値の構造を再定義していく、ということではないのか、と個人的に考える次第です。情報旧世ではデジタルデータの蓄積拡充そのものに価値を見出し、情報中世ではデジタルデータを新たに産み出しそれを流通させていくことに価値を置く、といったところですが、データの蓄積がこれまで以上に膨大なものとなり、それらを瞬時に多様に分析可能なAIが存在する現在の情報新世においては、データに基づく情報、知識をAIが無限に再生産することが可能となってきています。これまで我々が産み出してきた情報、知識という、一定の価値領域は、やがては完全にAIの役割になるのかもしれません。データと価値の構造の再定義とは、「データから意味を読み解く力」「データから新たな想像を描く力」、といった今のところ人だけが有すると考えられるこれらの力を活用し、データ、情報、知識、といったものの様々な関係性の中から意味を読み解き、豊かな発想のもと、「単なる知識の生産者」から「意味を有する価値(知恵)の創出者」へと立ち位置をシフトさせていく、ということではないかと考えます。
米国デューク大学上級フェローで行動科学分野の専門家であるダン・ヒース氏の名言に「データとは千の物語の要約でしかない-そのうち少しの物語を語ることで、データに意味を持たせよ。」というフレーズがあります。データとは現象の断片を抽象化したものにすぎず、それ単体では生きた意味をもたない、という洞察のもと、データ間の関係性を紡ぐ、つまり「物語を語る」ことで関係を見いだし、全体構造を描き出す行為の重要性を述べているとのことのようです。まさに情報新世におけるデータとの向き合い方に関して言及しているような気がします。
はるか太古に様々な生命体が地層に残した痕跡という記録を読み解き、私たちは多くのことを理解し、その結果多くのことを産み出してきたのだと思います。我々が生きる情報化社会においては、この地層というものではなく、多様なデータが蓄積する層というものが存在することになりますが、我々は、このデータ層に対し、どのようなデータという痕跡を残していくべきなのか、それはやがて後世を生きる人々が新たな時代を生き抜いていくための貴重な記録である、といった観点も少し自覚していく必要があるのではないでしょうか。そのためにも、データの奥にある様々な意味と関係を読み解き、新たな価値を創り出していく、といった情報新世という時代の本質的テーマではないかと考えられる点に日々取り組んでいくことは、データという新たな地層を産み出した私たちにとって、時代が課した大切な使命のひとつなのかもしれませんね。

*これまでの編集後記(2016年度以降)


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